大東亜戦争終結の直前に伊58潜水艦に撃沈されたのがアメリカ巡洋艦インディアナポリスです。

その2つの艦が最近になって相次いで海中から発見されています。

奇跡、奇縁としか言いようがありません。

インディアナポリスは終戦の直前に極秘任務についていました。

広島へ投下する原子爆弾をテニアン島まで輸送する任務でした。

 

原爆をテニアン島でおろし、その帰途のことでした。

伊58号の艦長 橋本以行はインディアナポリスの艦影を潜望鏡にとらえました。

通常は巡洋艦などの大型の艦船には、敵の潜水艦にやられないように駆逐艦の護衛がつくものでした。

駆逐艦には潜水艦の音を探知するソナーがあるからです。

駆逐艦のいるところでは潜水艦は自由に動けません。

 

しかしこの時、インディアナポリスは護衛なしでアメリカに帰ろうとしていました。

その理由というのが極秘任務が故に味方にもその任務を知らしめていなかったからでしだ。

私は一ヶ月くらい前にこの出来事を描いた「USSインディアナポリス」という映画を見ました。

それが故に、その後間もなくインディアナポリスと伊58が、

72年ぶりに立て続けに発見されたのは大変な奇跡に感じられてなりません。

 

その映画は邦題では「パシフィック・ウォー」といいます。

戦争の一局面を描いたこの映画に「パシフィック・ウォー」などという一般的に広げすぎたタイトルは

イタい邦題です。

この映画はニコラス・ケイジがインディアナポリス艦長のハーヴェイを演じています。

ちなみに私はニコラス・ケイジ主演の映画はだいたい観ています。

というのも彼の主演の映画にはあまりハズレがないからです。

単独での航海で潜水艦から身を守るためにはジグザグに航行するのが決まりになっていました。

 

しかしハーヴェイ艦長は人間魚雷回天の存在を知っていました。

若い士官とのやり取りで彼は。

The protocol is to run zigzag, sir. 「決まりではジグザグに運行することになっています、艦長殿」

Yeah, but it’s not effective for Kaitens. 「ああ、しかし回天に対しては効果がない」

Kaitens? 「回天?」

It’s a new Japanese suicide weapon. 「新しい日本の特攻兵器だ」

It can recalibrate its way toward a target. 「目標に合わせて進路を変更できる」

It’s just like Kamikaze under the water. 「海の中のカミカゼのようなものだ」

 

こういうやり取りがあって結局彼はジグザグ運動はせずに全速力でアメリカへ向かいます。

潜水艦には格好の獲物でした。

結局その後、橋本以行艦長操る伊58に発見されます。

伊58は回天を搭載していましたが、この時は回天は使わず、

通常の魚雷で仕留められると判断し通常魚雷を発射します。

回天での殉死者は極力出したくないというのが神主の家系の橋本艦長の本音でした。

魚雷は6発発射され、そのうちの3発が見事に命中します。

 

しかも当たりどころが良かったのか、あの大きな船がわずか12分という時間で海中に没してしまったのです。

インディアナポリスの乗員は合計で約1200人乗っていました。

沈没するまでの僅かな時間にSOSを打電したのですが、それがどういうわけか無視されて

悲惨なことに海に投げ出された乗員は4日間もの間海上を漂うことになってしまいました。

沈没の後、海上を漂う乗員たちの最大の恐怖はサメでした。

 

巨大なサメが何十匹もいつも自分たちの下を回遊していたというのです。

それがいつ自分を襲ってくるかわからない恐怖に長い時間さらされ続けてきたのです。

結局長い漂流の結果生き残った乗員は当初の1200人中わずか316人でした。

アメリカ海軍史上最大の惨事と言われています。

ハーヴェイ艦長は運良く生き残って無事にアメリカに帰るのですが、

そこから先が新たな苦難の始まりでした。

 

この後半部分がいかにもアメリカらしいところで、日本では絶対起こり得なかったことです。

戦後、軍はなんとハーヴェイ艦長を犯罪者として軍法会議にかけたのです。

その容疑が魚雷を避けるためジグザグ運動をしなかったというものなのです。

この裁判は世論の軍への批判の矛先を避けるためにハーヴェイ艦長を人身御供にそなえた茶番だったのです。

その証人喚問として何と直前の敵国日本から橋本以行元艦長を呼び寄せたのです。

 

橋本艦長は証人として証言台で。

We were too close. 我々二艦の距離はとても近かった。

There was no chance to escape. 魚雷を避けることは不可能だった。

とハーヴェイ艦長を擁護する証言をします。

 

しかしこの証言は裁判の過程で黙殺されてしまい、

ハーヴェイ艦長が魚雷を避ける努力を怠ったという結果がおりてしまいました。

映画ではその後死んだ乗員の遺族からひっきりなしにかかってくる恨みや脅迫の電話にハーヴェイ艦長が苦しめられるさまを描いています。

結果的にハーヴェイ艦長は耐えられずにその後自ら生命を絶ってしまいます。

 

映画「ジョーズ」でもインディアナポリスの生き残りという設定で出て来る人物がいたようです。

そのシーンを観た一視聴者がその後熱心にハーヴェイ艦長その他の名誉を回復する運動を続けました。

その結果戦後数十年立ってようやくハーヴェイ艦長の名誉は回復されたのです。

 

 

 

 

この名誉回復運動に橋本元艦長も積極的に参加していたことが映画の最後にテロップで流れます。

大戦の最末期に起こった何とも重い出来事でしたが、最終的にわずかに救われる気分になります。

伊58号は終戦後GHQにより他の艦船とともに海の底に沈められました。

 

大戦で亡くなった日米の英霊のご冥福をお祈りいたします。